【特別展「粋」Ⅱ】Special Exhibition "SUI Ⅱ" No.12　きせとちやわん　銘「黍餅」 / Tea bowl, Kiseto, “Kibi-mochi”

ざっくりとした赤味のある土にこの時代特有の黄瀬戸釉が施されている。唐九郎先生の最後の華として誕生した黄瀬戸は一世を風靡した。特徴的な油揚手と言われるざらみのある釉薬、大きく打たれた緑釉の「胆礬」は見込みに浸透して「抜け胆礬」となっている。鉄斑は2箇所に配されている。上から見るとやや沓状になっているが底部はなだらかなおにぎり形を呈している。茶碗を造形する上でこの上下が違和感なく連動している。見込みの轆轤目も力強くこの茶碗の見所の一つである。「鬼ヶ島」や「きび団子」などは桃太郎伝説の大きな鍵になっており唐九郎先生の「黍餅」という銘の付け方も興味深い。高台脇に「玄」の彫銘がある。昭和59年（1984）作。

所載：
『加藤唐九郎作品集』　日本経済新聞社　1986年