【北大路魯山人 作品展観】Exhibition of Rosanjin Kitaoji
開催期間:2018年11月9日(金) ~ 2018年11月13日(火)Exhibition : November 9 to November 13, 2018
北大路魯山人先生が「魯卿」と名乗り始めたのは、大正5年(1916)の33歳になった時です。岡本可亭の書生となって以来、唐代の「顔真卿」(顔魯公) に傾倒しておりました。魯とは愚か、大ざっぱで間が抜けていること。その「魯の字が好きだよ」と『魯卿』と名乗っています。
翌年には、神田駿河台のシンボルでもあるニコライ堂(東京復活大聖堂教会)の鐘の音が心地よく聴こえる紅梅町の借家に「古美術鑑定所」の看板を掲げて、書と篆刻の仕事もしておりました。
鎌倉に越したのは大正7年のことです。アジサイ寺といわれる明月院の門前にあった高梨家を借りました。谷川に架かる石橋を渡った茅葺き屋根の田舎家と納屋のような小屋があり、ここに「北大路魯卿」の表札をかけました。夏になると好物のスイカを谷で冷やし、家族皆で食べるなど忙中の閑を楽しまれたようです。
近くの小坂小学校へ転向した長男の桜一は素直で習字もうまく勉強もでき、大正10年には小学校を首席で卒業し、鎌倉五山第一位の建長寺が創立した鎌倉学園中学校へ入学しています。この頃、京橋の交差点にほど近い実業之日本社の増田義一社長に認められ、「実業之日本」の看板を頼まれ、同社の雑誌「日本少年」「小學男性」「少女之友」「実業之日本」の表紙題字なども手がけました。さらに現在の明治屋の所にあったレストラン「メゾン鴻乃巣」の看板もこの頃、仕上げています。厚みが15cmある欅の一枚板(3m×90cm)で彫銘は魯卿です。「メゾン鴻乃巣」は洒落たフランス料理店で志賀直哉、井上正夫、与謝野夫妻、木下杢太郎、北原白秋、高村光太郎、菊池寛、島村抱月、芥川龍之介、伊東深水、久保田万太郎、そして魯山人の魯卿らが常連の文化サロンでもありました。
その向かい道を行くと京橋の東仲通り‥‥この通りには「水戸幸」や「繭山龍泉堂」などの骨董屋も多く、明治末から漢方薬と葉茶を扱う三階建ての「一貫堂」というお店がありました。一貫堂の長男は神童と騒がれ、6才の時、明治天皇の前で書を書いた野田利衛(可童、のちの可堂)で、魯卿の教え子でした。
東仲通を挟んだ向かいに一貫堂の所有する二階家があり、大正8年、ここを借りて古美術を商う「大雅堂芸術店」を立ち上げました。「大雅の二字はすぐれて正しい、極めてみやびやかなこと。書画に秀でた大雅の雅号・大雅堂にあやかって店の屋号を『大雅堂』と決めたのです。
魯卿の優れた鑑識眼によって集められた書画、仏教美術、古陶磁など、「黒い中国服を着た男の集めた骨董品は筋が良い」「サルマタ一つの北大路の話は面白い」と評判がよく、多くの好寄者が集いました。
こうして一階で古美術を商いながらお客様が途切れると二階へ上がり、ステテコにチジミのシャツを着て、手ぬぐいを細く丸めて額に巻きつけ、寸暇を惜しんで直径十五センチほどある太い竹を真二つにして「天上天下唯我独尊」と彫刻刀で彫り込み、胡粉に緑青を塗るなど篆刻の仕事に精をだしました。二年後には、この二階で料理の腕を活かした「美食倶楽部」という会員制の料理屋を開業しました。ここでは魯卿が蒐めた古染、古赤絵、オランダや古瀬戸や唐津や織部などの器に吟味した食材で京風料理に腕をふるって盛り付けました。連日、満席の大評判となりました。
美食倶楽部の会員は天下の名士ばかり、二條公爵、徳川家達、久邇宮殿下、子爵の岡部長景(東条英機内閣のもとで文部大臣)、建築家の吉田五十八(1954年日本芸術院会員)、法律家の江木衷、無敵の強さを誇った横綱太刀山などが常連客となりました。この忙しい中、魯卿の篆刻による印影八十八顆を納めた『栖鳳印存』や日本書院から『常用漢字三体習字帖』も北大路魯卿として発刊しております。
美食倶楽部の会員は増え続け、古陶磁だけの器を使うことに限界を感じた魯卿は自ら器を作りだすことにして、大正12年7月から8月、山代の菁華窯で自分好みの作品を二窯焼きました。ところが菁華窯から帰った9月1日昼頃、突然の関東大震災に襲われ、夜中の三時頃、神田佐久間町から火の手があがり、瞬く間に神田から日本橋、京橋、銀座まで火の海と化しました。
「大雅堂美術店は駄目でも会員のためにも美食倶楽部だけは再開したい」と魯卿は、芝公園で「花の茶屋」をたちあげ、菁華窯で制作した器で営業をはじめました。その後、京伏見の宮永東山窯で制作するなどして大正14年には星岡茶寮を開店させ同15年には鎌倉山崎に星岡窯を開きました。
しぶや黒田陶苑では、平成25年の秋、この「大雅堂美術店」の跡地で「魯卿あん」を開店させていただきました。魯山人先生の芸術性が確立し、大きく羽ばたいた大正時代を想い‥‥この地に特別なご縁を感じながら先生の号であった「魯卿」を拝借して『魯卿あん』とし、魯山人作品を大事に扱わさせていただいております。
この機会に、人々を魅了させてやまない数々の芸術作品をうみだした魯山人芸術をご高覧いただければと、お誘い申し上げます。
魯卿あん 黒田草臣
In 1916 when he was at the age of 33, Kitaohji Rosanjin began to use the name “Rokei (魯卿)”. Since he started to study under Okamoto Katei, a famous calligrapher whose grandson is Okamoto Taro, he has devoted himself to” 顔真卿(Ganshin-kei) or 顔魯公(Ganro-ko), as known as Yan Zhenqing” a politician and a calligrapher of Tang-Dynasty.
The Chinese character “魯” as in顔魯公 means silly, loosely or goofy, and he loved to use the character in his name. In 1919, he founded Taigado Art Gallery of Antiques. Taiga means well-behaved and elegant, and named after Ikeno Taiga, Japanese Calligrapher and painter, whose alias is Taigado.
The selection of Rosanjin such as calligraphy, Buddhism Art and antique potteries has good reputation. “The man in black Chinese clothing” or “The man wearing only underwear” was not just a reason to attract people, but also his aesthetics and interesting talk. Not a few sukimonos gathered to the gallery. Meanwhile opening the antique gallery on the first floor, he devoted himself to engravings at upstairs when he had no visitors. Two years later, he founded a restaurant for members only, “Bishoku Club (Gourmet's Club)” on the second floor of his gallery, where he began serving Kyoto-style food on his collection of ceramics, such as old Sometsuke, Aka-e, the Oranda (ceramics from Germany), Old Seto, Karatsu, and Oribe. The good reputation brings many customers so that there was no vacant table every day. In the meanwhile he in this busy period succeeded to publish his engraving books.
In 2003, we opened “Rokeian”, having a chance to open the gallery at the site of Taigado Art Gallery. Thinking of the Taisho Era (1912-1926) when the aesthetics of Rosanjin was established, we mainly treat his pottery and other artworks. We would be very much pleased if you come and enjoy the works that can’t help attract us.
Kusaomi Kuroda
【北大路魯山人 作品展観】Exhibition of Rosanjin Kitaoji
No.1 織部風蟹絵文向付 Dish, Oribe-style
17.7 / 17.2 / H4.3cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.2 織部カニ絵鉢 五客入 A set of 5 Dishes, Oribe
16.5-18.1 / H3.7cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
出品歴
北大路魯山人展(日本橋高島屋他 1997)
桃山陶芸と魯山人(姫路市立美術館 2002)
北大路魯山人展 四季を創る(佐野美術館 2003)
No.3 絵瀬戸水指 Water Container, E-seto
21.2 / 20.0 / H11.7cm
共箱 with box signed by artist
※お問い合わせ下さい / Please inquiry
No.4 赤志野半筒形茶碗 Chawan, Red Shino
11.8 / 11.4 / H7.8cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
売約済 Sold
No.5 黄伊羅保茶碗 Chawan, Ki-Irabo
16.0 / H6.0cm
共箱 with box signed by artist
※お問い合わせ下さい / Please inquiry
No.6 備前土く志目花瓶 Flower Vase, Bizen
27.4 / H34.7cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.7 裾野 蒔絵椀 十人 A set of 10 Lacquared Bowls
12.7 / H9.7cm
共箱 with box signed by artist
北大路魯山人作品図録 (白崎秀雄著)所載
没後20年記念 北大路魯山人展(日本橋高島屋他 1979)
北大路魯山人展 (京都国立近代美術館 1988)
美食もてなしの芸術 北大路魯山人展 (東京都庭園美術館 1996)他多数出品
No.8 絵瀬戸満月四方向 五 A set of 5 Square Dishes, E-seto
19.3-17.8 / H4.8cm
共箱 with box signed by artist
※お問い合わせ下さい / Please inquiry
No.9 色繪糸巻皿 五人 A set of 5 Dishes, Iro-e
15.6-14.8 / H4.3cm
荒川豊藏箱 with box signed by Toyozo Arakawa
出品歴
北大路魯山人展(日本橋高島屋他 1997)
桃山陶芸と魯山人(姫路市立美術館 2002)
北大路魯山人展 四季を創る(佐野美術館 2003)
No.10 備前この葉鉢 Bowl, Bizen
33.4 / 22.2 / H5.4cm
共箱 with box signed by artist
※お問い合わせ下さい / Please inquiry
No.11 乾山風皿 龍田川意 Dish, Kenzan-style
19.5 / 19.0 / H3.4cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.12 備前土平向(五) A set of 5 Dishes, Bizen
18.2-17.4 /H3.2cm
共箱 with box signed by artist
売約済 / Sold
No.13 伊賀釉シノギ四方鉢 Square Bowl, Iga
23.4 /H3.8cm
共箱 with box signed by artist
売約済 Sold
No.14 備前割山椒 六人 A set of 6 Bowls, Bizen
13.0-11.6 /H7.8cm
共箱 with box signed by artist
出品歴
北大路魯山人展(日本橋高島屋他 1997)
桃山陶芸と魯山人(姫路市立美術館 2002)
No.15 志埜ジョッキ Beer Mug, Shino
16.4 / 12.2 / H17.8cm
共箱 with box signed by artist
出品歴
北大路魯山人展(日本橋高島屋他 1997)
桃山陶芸と魯山人(姫路市立美術館 2002)
※お問い合わせ下さい / Please inquiry
No.16 有平ゆのミ 五 A set of 5 Yunomi
7.6-7.9 / H8.3cm
共箱 with box signed by artist
北大路魯山人秀作図鑑 (白崎秀雄著)所載
没後20年記念 北大路魯山人展 (日本橋高島屋他 1979)出品
No.17 色絵十草文土瓶 Pot, Iro-e
19.2 / 15.4 / H13.0cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.18 そめつけ花ト魚鉢 Bowl, Sometsuke
19.0 / H7.7cm
共箱 with box signed by artist
¥700,000(税込/including tax)
No.19 そめつけ花ト魚鉢 Bowl, Sometsuke
18.6 / H7.6cm
共箱 with box signed by artist
¥1,200,000(税込/including tax)
No.20 絵志野筍ト檜垣文茶碗 Chawan, E-Shino
10.0 / H7.5cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.21 絵志野檜垣文筒茶碗 Chawan, E-Shino
10.8 / H9.1cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.22 そめつけ竹徳里 二 A set of Two Tokkuri, Sometsuke
7.1/ H12.1cm
共箱 with box signed by artist
¥1,200,000(税込/including tax)
No.23・24 金襴手赤呉須盃 Sakazuki
左left:5.8 / H2.2cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
右right:5.8 / H2.2cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
※ニュウ有 please contact us regarding the condition
No.25 粉引馬上杯 五人 A set of 5 Sake Cups
5.0 / H5.5cm
共箱 with box signed by artist
No.26 刷毛目銀彩徳里 Tokkuri, Silver Brush marks
8.6 / H10.8cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.27 黄瀬戸釉くぎ彫有はち Bowl, Ki-Seto
16.5 / H8.5cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
北大路魯山人秀作図鑑 (白崎秀雄著)所載
¥280,000(税込/including tax)
No.28・29 絵瀬戸渦巻文湯呑 Yunomi, E-Seto
左left:7.3 / H8.4cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
右right:7.3 / H8.4cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
No.30 畫禅 二字 Scroll, Calligraphy
36.0 / 103.0cm
陶々菴箱 with box signed by Totoan
※お問い合わせ下さい / Please inquiry
※ ご紹介しております中には、ご売約戴いている作品もございます。
※ 作品の詳細等のお問い合わせ、ご予約等はしぶや黒田陶苑までご連絡ください。
電話 :03-3499-3225 E-mail :info@kurodatoen.co.jp
※ 写真掲載外にも多数出品作品がございます。