Exhibition 【田中佐次郎 自撰五十】Exhibition of TANAKA Sajiro

窯の焼成

粘土を製作して登り窯で焼成することは、自動車などの内燃機関の動力装置に等しく発火から排気に至るまでの構造上の仕組みは流体力学上焼物作りと同じ働きを呈します。

蒸気機関車を動力として走る時に、燃料を入れる窯の丸い鉄の蓋を開いてショベルで石炭をくべます(拙著経験)。私の窯の吸入孔も同じように入口のレンガの蓋を取り松の薪を投げ入れます。
これをくり返して温度が上がって高圧がかかり、熱は高い所で千三百五十度になり窯内の機能は暗焱・陰焱・極核焱・陽焱・光焱と分裂分解されて焱と煙の不可分は日星河嶽の法則を以て左状に渦を捲き上げ風速5メートル以上の勢いで窯の中の暗焱から光焱に置いた製品にかぶります。これが紫紅の色彩を作り出します。

焼成する作品は大自然の地球に内蔵している鉄・マグネシウム・コバルト・マンガン・ナトリウム・石英その他あらゆる粘土鉱物などの元素と高焱との融合作用により焼物が出来ます。つまり焼物づくりは地球を焼いて陶器が生まれてくることになります。

また窯を焼いて作品を仕上げるのは人間の仕業を離れた火の神「神技妙霊」を借りることにあり即ち萬有の神機と窯を操縦する作者その人の「思想の規矩」とが感應道交して焼物が産まれると考えております。

不盡謹上
令和元年十月　　　焼手　田中 佐次郎




しぶや黒田陶苑 ５０周年記念展
『田中佐次郎　自撰 五十』

田中佐次郎先生が30代のころ、安土桃山時代に焼かれた唐津の名窯を足繁く発掘調査されていた。岸岳の斑唐津をはじめ、牛石、阿房谷の絵唐津、そして幻の名窯と謳われた山瀬下窯では絵斑唐津に魅せられ、凄まじい「古唐津再現」への意欲に燃えてこられた。

独立されて登窯を築かれたのは長閑な田園地帯にある唐津常楽寺の境内。半田川の清流に石橋が架かり、渡ると常楽寺の山門。二階部分が鐘楼堂になっていた。佐次郎先生が40才のころ、その川沿いにある登窯と工房にはじめてお邪魔した。お会いすると穏やかな優しさのなかに、ひとたび斑唐津や加藤唐九郎、小山冨士夫の話になると若武者のごとく眼光炯々となる。

「高台のチリメン皺に醍醐味があり、土味は明るくて品格を感じさせる山瀬窯を再興したい」といわれ、数年後、山深き山瀬に分け入り、苦行難行のなか荒野を整地して谷川の流れる絶好地に長大な15連房の割竹式登窯を50歳の時に築かれた。

当苑での初個展は1985年、以後、毎年のように開催していただき、「山瀬築窯記念展」、「30周年記念　三十碗展」、「40周年記念　高麗茶碗展」などその節目ごとに驚愕ともいえる作品を発表されてこられた。

この度、当苑は50周年を迎えての「田中佐次郎　自撰 五十」展として、初窯以来、挑んでこられた「斑唐津」や李朝古窯址を巡って掴みとられた「井戸茶碗」という佐次郎先生渾身の新作をお願いした。


しぶや黒田陶苑
黒田草臣

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＜English Translation at below page＞
https://20902445.at.webry.info/201910/article_7.html