No.23 備前徳利 Sake bottle, Bizen

金重陶陽 / KANESHIGE Toyo

  • 「No.23 備前徳利 / Sake bottle, Bizen」の写真 その1
  • 「No.23 備前徳利 / Sake bottle, Bizen」の写真 その2

Box
共箱
with box signed by the artist
サイズ
Size
8.3 / H12.7cm
¥3,850,000
(税込/including tax)

昭和16年、戦争に伴い、人手がなくとも焚けるよう窯の構造を作り変え、そこから他の作家が「『秘密室』から生まれた」と驚くような作品を世に送り出していった。
「窯づめで窯を焼いとけ」という名言があり、火の性格を見極めて、火に逆らわないよう、火の通りの良いよう、火によって応用できるよう窯づめせよと語られている。
また、陶陽先生は心から土を大切にした。極上の田土を水簸もせず、篩にもかけず、足で踏んで練る。そして、不純物は薄く切った断面から手作業で取り除く作業を繰り返し、土ごしらえした土はゆっくり寝かせる。轆轤は静かで使い慣れた手轆轤。落ち着いて精神統一が出来たその時には、不思議と自力以上のものが生まれたという。無我の境地に達した作品かどうかが最終判断の基準だったのだろうか。少なくとも、よくできた作りのものを特等席で焼いたと聞く。
引き締まった口づくりに角ばった肩衝の肩先の削り、そして、肩の下あたりと腰から下に窪みをつくり、斜めに走る鉋筋がかすかな土の動きをつくりだしている。
この抜群のカセ胡麻徳利は眺めているだけでも、凛々しい立ち姿にうっとりしてしまうのだが、お酒を注ぐその心地良さにこそ、一番の魅力を味わうことができるに違いない。
畳付きに「ト」の彫銘。

所載:
『現代日本陶芸全集〈第九巻〉やきものの美-金重陶陽』 集英社 1981年